骨粗鬆症に効果的な運動は?骨折予防に有効なエビデンスを解説

整形外科

骨粗鬆症の予防や治療には運動が効果的とよく言われます。
しかし具体的な運動内容となると、医師も含めて詳しくは理解していないことが多いです。

散歩などのシンプルな運動を行えばよいのでしょうか?
それとももっと効果的な運動方法があるのでしょうか?

この記事では日常診療で質問されることの多い、
骨粗鬆症の具体的な運動方法に関して、ガイドラインやエビデンスをもとに解説します。

この記事を読んで、今日から骨粗鬆症に効果的な運動をはじめましょう!

Dr.あかげら
Dr.あかげら

骨粗鬆症の予防、治療には
週3回以上の散歩や体重負荷運動と、週2回以上の筋力トレーニングが有効です。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は骨密度が低下することで骨が脆くなり、骨折しやすくなる疾患です。
閉経後の女性はホルモンの関係で骨粗鬆症を発症しやすくなります。

治療は大きく生活療法と薬物療法に分けられます。
・生活療法:運動療法、食事療法、禁酒、禁煙など
・薬物療法

効果的な運動療法

『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』に具体的な内容が記載されています。
*ガイドラインは無料でダウンロードできます。

骨密度を上昇させるための有酸素荷重運動・筋力訓練、椎体骨折を予防するための背筋強化訓練、転倒を予防するための筋力訓練・バランス訓練の効果が参考となる。

分かりにくくて読んでいても頭に入ってきませんね💦

ガイドラインの記載は以下の3つに分けることができます。

 ①有酸素荷重運動・筋力訓練 →骨密度上昇
 ②背筋トレーニング   →椎体骨折予防
 ③筋力訓練・バランス訓練  →転倒予防

具体的に一つずつ解説していきます。

①有酸素荷重運動・筋力訓練

ウォーキング(8,000歩/日、3日以上/週)は骨密度を上昇させます。[参考文献]
ウォーキング(30分/日)と筋力訓練(2日/週、最大重量(1RM)の40%の負荷で8~10 回/日から開始)は骨密度維持に有用です。[参考文献]

8,000歩/日、3日以上/週の散歩で骨密度上昇の効果があります。

②背筋トレーニング

閉経後女性に対し、背筋の最大筋力の30%の負荷を背負って行う背筋トレーニング(1日10回、週5回)を2年間指導した研究があります。
10年後の評価で背筋力と腰椎骨密度は有意に高く、椎体骨折発生率は有意に低くなりました。[参考文献]

背筋トレーニングは骨折予防に効果があります

③筋力訓練・バランス訓練

転倒予防には週に2~3 日以上の筋力訓練・バランス訓練が有用とされています。[参考文献]

75 歳以上の高齢女性がバランス訓練(片足起立訓練:1分×3セット/日、6ヵ月)は、
転倒発生率を低下させると報告されています(片足起立訓練群14.2% vs 対照群20.7%)。[参考文献]

骨粗鬆症の方が転ぶことで骨折が生じるため、
転倒を予防することは骨粗鬆症の治療において重要な要素です。

片足立ちなどのバランス訓練は転倒予防に効果的です。

最近のエビデンス

ここまでガイドラインの内容を確認しました。

通常の散歩でも効果はあるものの、
筋力トレーニングなどを加えた方がより効果的なことがわかりました。

ガイドラインは2015年に作成されたため、最近のエビデンスではどうでしょうか。

2022年にイギリスから出された声明を確認しましょう。[参考文献]

主な推奨事項は以下になります。

  • 骨の強度を最大化するために体重負荷運動と筋力トレーニングを行う
  • 転倒を減らすために筋力とバランスを改善する活動を行う
  • 姿勢を改善し、転倒や脊椎骨折のリスクを軽減するための背筋トレーニング

前述のガイドラインに近いことが記載されていますが、「体重負荷運動」という言葉が気になります。

詳しく調べてみましょう。

体重負荷運動とは

中程度の衝撃が加わる運動のことを指しています。

具体的には足踏み、ランニング、ジャンプ、エアロビクス、一部のダンス、多くの球技やスポーツが含まれます。

声明ではこれらの体重負荷運動を1日30分間、1週間のうちほとんどの日で実施するように推奨されています。

一方で体重負荷運動が骨密度増加に繋がる強力なエビデンスはまだないようです。

理論的には体重負荷運動を行った方がいいが、研究ではまだ十分に証明できていないということなのでしょう。

なお高齢者や、過去に骨粗鬆症の圧迫骨折がある場合、早歩きで十分な体重負荷運動になります。

実際の指導内容

ここまでをまとめます。

・週3回以上の散歩(8,000歩/日)や体重負荷運動

・週2回ほどの筋力トレーニング

ここで似たような推奨をみたことがあると気がつきました。

世界保健機関(WHO)が2020年に出した「WHO身体活動・座位行動ガイドライン」です。
日本語へ翻訳されたものがダウンロードできるのでぜひ確認してください。

8,000歩/日の散歩は60分/日に相当するため、週3日行うこと180分/週になり、WHOの推奨を満たします。

以上のことから、骨粗鬆症を予防、治療するための運動は、WHOの推奨と

まとめ

・週3回以上の散歩や体重負荷運動

・週2回ほどの筋力トレーニング

・運動を楽しんで継続できることが重要

コメント

タイトルとURLをコピーしました